ここは退屈 迎えに来て 解釈

監督:廣木隆一 原作:山内マリコ「ここは退屈迎えに来て」(幻冬舎) 脚本:櫻井智也 出演:橋本愛 (私) 門脇麦 (あたし) 成田凌 (椎名くん) 渡辺大知(黒猫チェルシー) (新保くん) 岸井ゆきの (山下南) 人は誰でもオンリーワンである、と私は思う。 だって世界中のどこを探しても私と同じ人間はどこにも存在しないのだから。 大都会に行けば私をキラキラさせてくれる何かがあるはず。つまらない地元を飛び出し東京へ出たものの、何か成し遂げることも特になく10年で地元にuターンした私。 山内マリコ『ここは退屈迎えに来て』は、地方出身者が思わず共感してしまう小説。ロードサイドで不完全燃焼な日々を送る女の子たちが、痛々しくもどこか「癒やし」も感じさせる。 『ここは退屈迎えに来て』は2018年の映画。『ここは退屈迎えに来て』に対するみんなの評価やクチコミ情報、映画館の上映スケジュール、フォトギャラリーや動画クリップなどを紹介しています。 男性は「現実を冷静に分析し、自分の力で這い上がる方法を考え」るが、女性はここでもシンデレラだ。別に死ぬほどつらくはないけど毎日がどんより曇り空、みたいな日常に彼女たちは居場所を探している。「私」にとって椎名と過ごした思い出は、退屈な田舎で過ごした10代で唯一青春と呼べる時間だった。今の自分は「仮の姿」だと感じてるからこそ、「本来の自分」を「取り戻す」のは、それほど難しいとも努力が必要なことだとも思っていません。一部の人にとってはなかなか中毒性が高く、どこか癒やしのある作品ではないだろうか。地元のことは好きだし、仕事もそこそこ頑張っていたし、身の回りの人間関係も良好。Uターン後もなんとなく居心地がよくない地元で、あの椎名にまた会えるという、ちょっとウキウキするイベント。学生時代の延長で、惰性で続けていた吹奏楽サークルの練習に向かう土曜の夜。ブックオフ、ハードオフ、モードオフ、TSUTAYAとワンセットになった書店、東京靴流通センター、洋服の青山、紳士服はるやま、ユニクロ、しまむら、西松屋、スタジオアリス、ゲオ、ダイソー、ニトリ、コメリ、コジマ、ココス、ガスト、ビッグボーイ、ドン・キホーテ、マクドナルド、スターバックス、マックスバリュ、パチンコ屋、スーパー銭湯、アピタ、そしてイオン。「女の子」といっても、上は都会からUターンしたアラサーから、下は親元を離れたことがない高校生まで、幅広い。地方は、ここはつまらない場所じゃないと確かめるためには能動的な活動と熱意が必要だ。引用元:『ここは退屈迎えに来て』より「私たちがすごかった栄光の話」地方の人気者、田舎の神童だった椎名は、大阪に出たらただの人だった。そして地元に帰ってきて、20代のうちに結婚して、子どもももうけた。店内に「地元サイコー!東京なんてクソ食らえ!」というポエムを誇らしげに飾る、マイルドヤンキー属性の男だ。さっき一節を紹介した「私たちがすごかった栄光の話」は、この短編小説集の「顔」と言える作品だ。このタイトルを目にしたとき、女性心理を知り尽くしたセールスライター・谷本理恵子さんの言葉を思い出した。地方で居場所がない何者でもない人間と、地方でも身の丈の幸せを享受できる人間を、私のような中途半端な人間は、それも近寄りがたく、実にちゅうぶらりんだった。巻頭に収録された「私たちがすごかった栄光の話」の2ページ目で、この物語の沼にずぶずぶと引き込まれた。遠く離れた場所で文庫本を開く30代の私を、物語の沼に引きずり込んだ。片道20〜30分、幹線道路沿いのファスト風土を眺めながら車を走らせていた。こういう景色を”ファスト風土”と呼ぶのだと、須賀さんが教えてくれた。でも誰にも魔法をかけてもらえないまま、もう若くもなくなってきたこんな景色の中にいた20代の自分の、当時の感覚が鮮明に思い出された。ないものねだりで、「田舎」「故郷」と呼べる場所がない人にとっては、ちょっと羨ましい部分もあるそうです。しかしそれは、ほぼほぼイコールで地方創生や町おこしだったりして、意識高い系であった。後者の一人として、ロードサイドのラーメン屋という登場人物もいる。タウン誌をめくれば、ここでの娯楽は新しくできたカフェに行くことと結婚式を挙げることしかないのかとクラクラした。ファスト風土な地方で暮らした人はもちろんのこと、都会育ちの人が読んでも面白いみたいです。前者である「私」は内心大笑いするし、カメラマンの須賀さんはアンサーポエムを書いて反撃するし、都会での挫折感や喪失感を引きずらずに、地方で等身大の暮らしを受け入れ、満足している。シンデレラはかまどの灰にまみれ、床を掃除しながら、「私は、本来はお城にいるべき人間なのに、何かがおかしい」と感じつつ、毎日暮らしています。「ここは退屈迎えに来て」って、女の本音を表す絶妙な表現だと思う。道の両サイドにはライトアップされたチェーン店の、巨大看板が延々と連なる。具体的にどの県が舞台かなんて書いてないけれど、地方出身者ならもれなく震え上がるような描写があるのだ。でも、それは、もういい年齢の大人になったのにまだ何者かになりたい、居場所が欲しいとさまよっている前者の嫉妬も込みだ。まあ読んだところでゾンビは死なないし、この種の人にはずっとゾンビがついてくると思うが。でも、なんか、「ここが最高!」とは言えなないし、自分は何者でもない。主人公の「私」は、田舎町が嫌で上京して、中央線沿線で暮らした。「私」にとって唯一の青春だった憧れの椎名は、もういなかった。(相変わらずいいやつではあるのだが)身近なのに愛着は薄い固有名詞を、淡々と、必要以上に積み上げられ、私は脳みその中で叫んだ。一方、椎名も同じように都会に出てUターンした人間だが、彼は後者だ。本心では、魔法さえあれば理想の場所でいきいき輝く本来の自分に戻れると信じて疑わない、後者のように、特に椎名のように自意識をこじらせずに生きることが、退屈な地方で生きる一番幸せな姿なのかもしれない。女の子のリアルで繊細な心情の描写に喉の奥が何度もギュっとなるようなお話が詰まってます。現在は、仕事は情熱に燃えているわけではないが、勤務時間内は真摯に業務をこなしている模様。そんな地方でロードサイドをウロウロしていた20代の自分が、ゾンビのようによみがえって、 映画のロケ地は山内マリコさんの出身地の富山だそうですが、原作でも映画でも富山とは限定されておらず、その風景は2000年の大店法廃止により(まぁ、それより前からですが)駅前はシャッター通り商店街と化し、幹線道路沿いにはチェーン店やショッピングモールが並ぶ、日本全国画一化された地方の風景を映してたと思います。(まぁ最初から公式サイトの相関図を見ちゃうとある程度分かるんですが)物語の主軸は上のあらすじにあるように橋本愛さん演じる2013年の「私」で、高校時代憧れだった椎名をサツキがフェイスブックみたいのか何かで見つけて盛り上がって会いに行こうという話になってて、それを聞いた須賀も面白そうってことで一緒に行くとなって、取材終わりに「私」と合流することになってたサツキを拾うと、椎名が勤める教習所に須賀の運転する初代フォード・ブロンコで向かうっていうのがメインの話なんで、出てくるのは橋本愛さんと柳ゆり菜さんと村上淳さんが多くて、この3人が主役って気がしました。「私」の話のオチは、教習所で椎名と会って昔話に花を咲かせますが、椎名が結婚してることが分かり、自分の名前も忘れられてた(笑)というもので、『勝手にふるえてろ』と同じ展開でした。1980前後に生まれた者にとって特別なドラマ『その時、ハートは盗まれた』。なんと柚木麻子さんの『終点のあの子』も、『その時〜』を下敷きにしてました! いま本人が言ってました!!!廣木監督は好きな監督ですが、女性支持が高そうな女性作家の原作を立て続けに同じ男性監督が撮るというのが、果たして邦画界にとっていいのか微妙な気がして、ここは原作者たちと同じ年代(1980年頃)の女性監督に撮っていただきたかったなぁと思いました。なんか予告編からイメージした印象とは違ってて、予告編とかポスターですと橋本愛さんと門脇麦さんと成田凌さんがトリプル主演でがっつり絡むのかと思ってたんですけど、そういう感じじゃなかったんですよね。そのようなヒエラルキーだった高校時代なわけですが、卒業後の椎名は新保の話を聞く限りうだつの上がらない男で、大阪に出ても何者にも成れず地元に戻ってきた男です。それとサツキの一連の発言は、アーティストに対する「イベントに行けませんが頑張って下さい」問題と似ているところがあると思うんですよね。「私」とサツキは10年経っても憧れの的だった椎名に対してときめいていますが、懐かしさから途中立ち寄ったゲーセンで、偶然、大阪から帰省していると言う新保に会うと、椎名という人物が見えてきます。結局、「いいなぁ、行きたい」って言ってるだけで行動を起こさないのは、思いが本物じゃないというか、「東京に憧れてるなら、とっとと行けばいいのに」と思ってしまって、あのシーンはノレませんでしたね。ラストは、登場人物の中で椎名の妹の朝子だけが東京に住んでいて、スカイツリーが見えるマンションの屋上で「超楽しい」と呟いて終わるんですが、個人的には朝子が原作者の山内マリコさんな気がして、朝子という名前も柚木麻子さんから来てるのかなぁとか思ったりしました。それで教習所に向かう間に突然2008年とか2010年の話が挟み込まれるんで、最初は「オムニバス形式の話なのかな?」と戸惑うんですが、観ているうちにそれぞれの話の登場人物が椎名に緩やかに繋がっているのが分かるという展開です。テーマ的にはそんな2000年代の地方に暮らす若者の鬱屈した思いを描いてたと思うのですが、最初に書いたようにサツキみたいな東京への過度な憧れを持ってなかった自分にはそれほど刺さりませんでしたが、フジファブリックによる主題歌の「Water Lily Flower」に映像を載せたエンドクレジット(テレビドラマであるパターンのやつ)は鑑賞後感がよく、自分的にはそこがクライマックスでした。新保は、2人とも気持ちが荒んでいた時にしばらくつるんでいたと話しますが、「私」とサツキが椎名が働いてる教習所に行くと言うと、新保は「そうか、まだ仕事続いてるんだ」とボソッと言い、一緒に行くかと誘うと「自分はいい」と言って新保は断ります。なので話のメインとしては、「それぞれの関係性が分かる」というのが肝なので、それぞれの話の物語性は低い(取り立てて何が起きる訳では無い)のですが、それでも上映時間98分というコンパクトな作品なので退屈すること無く観れました。朝子は椎名の妹、山下南は2013年に椎名と結婚、森繫あかねは2010年の時点で皆川と付き合っていて2013年までの間に結婚してるという関係です。ただ個人的に序盤からノレないところがあって、自分は東京50km圏内の生まれ育ちなので、サツキがしきりに東京に行ってた2人を羨ましがるところで、2人が「そうでもない」と言ってるのに、サツキが「またまたぁ」みたいに言うのがウザくて、あそこまでの東京への憧れ自体が理解できなかったのと、あの2人は東京に挫折して戻ってきたのに、「ちょっとは空気読めよ」と思ってしまいまして…。でも、この映画、憧れれば憧れるほど、追いかければ追いかけるほど、手に入らないってことを描いてたようにも思います。最初分かり辛いのは2010年の山下南と森繫あかね、2004年の朝子とまなみ先生、援交してるなっちゃんと皆川の話なんですが、それも最後の方になってくると椎名との関係性が明らかになってきます。原作は例によって未読で、予告編を見ただけの予備知識で鑑賞です。

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